宇野ゆうかの備忘録

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BBC出演中の「子供乱入」から考える、テレワーク時代のビジネスマナー

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最早テレワークでありふれた光景になった「子供乱入」が、またもやBBCで起こったとのこと。これについて、BBCのキャスターと、自宅から出演する博士と、博士の娘のやり取りを考察している細馬宏通氏の連続Tweetが興味深かった。とりあえず、連続Tweetを全て読んでみてほしい。

 

 

子供は、まず部屋の中に絵を持ち込んで、どこに飾ろうかと考えている。そして、母親に「Excuse me」と言う。母親は子供の問いかけに答えず、しばらく画面に向かって仕事モードで話し続けるが、スタジオにいるキャスターから「娘さんのお名前は?」と尋ねられ、母親が「彼女はスカーレットです」と答る。(この時点で、一人で絵をどこに飾ろうか考えていた子供は、振り返って反応する。)キャスターから話しかけられた子供は、「この人のお名前は?」と母親に尋ねる。母親はそれに対して、人差し指を口に当てて「シーッ」と言い、静かにするよう促す。キャスターが「クリスチャンです」と答えると、子供は「クリスチャン、これをどこに置けばいいのか、お母さんに聞いてるの」と言う。

 

この子供の行動は、自分の家に大人のお客さんが来た時の行動として、ごく自然な振る舞い、というか、むしろ礼儀正しい子供の振る舞いだと思った。大人同士が話している最中に親に話しかけたくなった時には「Excuse me」と言っているし、自分の家に知らない人が来たとなれば、紹介を求めるのは当然と言えるだろう。

大人は、テレワークを会社の仕事の延長として考えているが、子供は、家に親のお客さんが来ていると考えているのかもしれない。

 

大人は、こういうシチュエーションで子供が乱入すれば、画面の向こうの相手に対して迷惑をかけたと考えてしまうものだ。件のBBCの博士も、子供が乱入したことについて「I'm so sorry」と謝っている。

しかし、スカーレットちゃんの振る舞いは、テレワークとは何かという本質を、ある意味浮き彫りにしたと思う。つまり、テレワークとは、その家の子供をはじめ、相手の家族にとってのプライベート空間である「お家」に、大人が「お邪魔している」ということなのだ。そうなると、大人たちは、子供をはじめ相手の家族に対して、礼儀正しく振舞えているのだろうかと考えてしまう。

 

以下の記事に書かれていることは、BBCの「子供乱入」と同一線上にある問題だと思う。

“夫の会社がオフィスを半減するというのが、ニュースで入ってきて、会社は全然分かってないのかな、と思う。
自分も系列の会社にいたことがある。

シェアオフィスでもなんでもいいし、週に半分でもいいから、外で仕事をしてほしいと思ってしまう。
それは仕事に行って、ということではなく、失われたささやかな日常の時間と、くつろぎの場であったリビングを返してほしい、という意味で。

東京の感染者数が増えていて、またテレワークを強化する会社が出てくるだろう。
テレワークにすれば先を行っている、感染症対策に積極的な会社であると考えているとしたら、それはたくさんの家庭にいる人の犠牲のうえに成り立っているのだと知ってほしい。”

ささやかな日常の営みが人生を作っている|下司 智津惠|Geshi Chizue/月と流星群|note

note.com

 

 テレワークというのは、本来その家の家族のものである空間の一室や、本来家族がそこで過ごしていたはずの時間に侵入するということなのだ。

となると、「子どもが乱入」という言葉も、あまり相応しくないかもしれない。子供は自分の家なのだから、乱入していない。むしろ、入って行っているのは会社のほうである。

 テレワークにおいては、子供を乱入させないことがマナーなのだと、多くの人が思っているが、本当は、会社の側が、相手の家に「お邪魔している」という自覚を持つことのほうが、マナーかもしれない。

 

もう一つ思うことは、昔からの農家や商家では、このような「仕事/プライベート」が混じり合う環境というのは、ごく普通のことだっただろうということだ。作業をしている親の傍で子供が遊んでいたり、抱っこ紐で子供を背負った親が客の相手をすることは、ごく当たり前の光景だっただろう。

その後、会社勤めが仕事のスタンダードスタイルになると、仕事の場に子供が入り込まないのが普通になった。

そうして、今の時代、テレワークをせざるをえない状況になって、再び「仕事/プライベート」が混ざる時代になっているというのは、ある意味では興味深いことである。