大人はなぜ若者文化をバカにするのか
私はバリバリの若者だった頃、大人はなぜ若者文化をバカにしてくるのか、ずっと疑問に思っていました。私自身は若者の流行に乗るほうではなかったのですが、それでも、別に大人たちを攻撃しているわけでもない、ただ単に若者が勝手に楽しんでいるだけのことにも、いちいちバカにしてくる大人たちの存在というのは、謎でした。若者は、大人たちが大人たちの時代のものを楽しんでいても、別に何とも思わないのに……
また、私が若者だった頃は、上の就職氷河期世代の人たちもまだ若者扱いで、社会の中で大した発言力もありませんでした。就職氷河期世代を救済しないことには、いずれ社会全体にそのツケが回ってくるであろうことは、おそらく、就職氷河期世代より下の世代は、感覚的に理解していたでしょうが、どうにも、年長者世代にはあまり理解されていないようなフシがありました。
それどころか、「今の若者はモノに囲まれて豊かに育って、何の苦労もなかった世代」だとか、「近頃の若者は頼りない。軍隊に入れて鍛えたほうがいい」だとか言われていました。
そういうわけで、当時の私は、上の世代の大人たちを見て、「人はなぜ老害になるのか」を考えるようになりました。色々考えた結果としては、大抵は、「若い頃のまま感覚が更新されず、止まってしまっているから」というのが原因でした。
上の話は、流行には乗りたくないと思っていた著者が、クリエイティブな人になるための講座に行って、講師から「センスを良くしたいなら、流行っているものを浴びまくって下さい」「例えば、パンケーキを食べに行って下さい」と言われるエピソードが書かれています。
また、「クリエイターが嘘の感情を出すと、その嘘に呪われることになる」と言われて、「今まで発信してた『若者文化ギライ』みたいな言葉も、私に呪いをかける嘘の感情だったかも…」という言葉とともに、「インスタ楽しいしパンケーキおいしいね」と言っている若者女子に対して「ケッ!!イカのこのわたのが旨いで!!」と言いつつ、本当の私が「うわああん パンケーキ食べたいぃぃ」と叫んでいる絵が描かれています。
<漫画>絵画レッスン受けたらバチボコに怖い先生が出てきて人生観丸ごと変えられた話⑤
— 真船佳奈@テレ東の漫画家 (@mafune_kana) 2021年2月15日
画力UPするつもりが生き方を教えられた講義、今回は「クリエイターは嘘をつくと呪われる」お話。じゃがりこの感想を言うライトな食レポレッスンかと思ったら呪いの話に#コルクラボマンガ専科 #コルクアートクラス pic.twitter.com/RWc8kaXdgK
たぶんですけど、若者文化をバカにする大人って、若者だった頃、流行りに乗れてイケてるグループになりたいけどなれないという、鬱屈した思いを抱いて過ごしてきた人が多いんじゃないかと思います。
そういう人が若者をバカにする時は、高校生くらいの自分が、自分より上の「強者」を攻撃する感覚で言ってるんだと思います。でも実際には自分はもうとっくに大人で、若者より発言権があって権力的に上になってるから、若者に対する抑圧としてしか働かないんですよね。
若者時代に流行に乗るタイプだった人は、今では、インスタに自撮り載せてパンケーキ食べてタピオカドリンク飲んでる大人になってると思うんですよ。
つまり、これも「若い頃のまま感覚が更新されず、止まってしまっているから」なんですね。
他の部分では大人でも、若者の頃の傷が癒えていなくて、イケてる若者が楽しんでそうな文化を見ると、傷が開いて高校生の頃に戻ってしまう。そして、自分よりいくつも年下の若者につっかかってしまう。
これは、虐待連鎖に似ていると思います。自分が子供の頃についた傷を、大人になってから、自分の子供にぶつけてしまうという。
一方、若者はそういう大人の事情なんてわかるわけないので、なんで攻撃されるのか意味不明なんですよね。
何年か前、あるホテルが、自撮りが好きな若い女性向けに、女性誌とコラボしてナイトプールを提供したことがありました。その際、ナイトプール利用者の女性たちが「泳がない」「撮影するから、水に顔はつけない」などと言っているのに対して、「いやプールは泳ぐとこだろwww」とバカにする人が沢山いました。
そもそも、本気で泳いで良いプールは、競泳用プールかジムのプールくらいで、ホテルにあるようなリゾート用のプールや、ウォータースライダーがあるようなファミリー向けプールでは、本気で泳ぐほうが迷惑なのですが……それはともかく、この時も、流行りに載るキラキラした若い女性をバカにしたい人たちの圧がすごかった記憶があります。
特に男性が、流行に乗る若くてキラキラした女性をバカにする場合、若い女性に対する欲望と嫉妬が混ざってる傾向があるなと思いました。
イケてない高校生の男子が、スクールカースト上位のキラキラした女の子に欲望しつつも、「どうせ俺なんか相手にされない」と思って、鬱屈した気分を抱えているような……そして、「あいつらはバカだから、あんなバカみたいな流行に流されるんだ」と思って、「あいつら」に相手にされない自分を納得させようとするような……
これが本当に高校生男子だったらまだ可愛いものですが、実際には感覚が高校生に戻っているおっさんなので、若い女性からすると、わけがわからない上に、なかなか恐怖でしょう。
ただ、若者時代にイケてなかった人の全員が全員、若者文化をバカにするようになるわけではありません。特にイケてるグループになりたいわけでもなく、「自分は自分」という感じで過ごしてきた人は、大人になっても、若者文化にコンプレックスを感じずに過ごしていると思います。
あと、年齢を重ねたことによって、社会の中での自分の発言力が強くなっていて、若者に抑圧的に働くようになっている自覚がないっていうのもありそうですね。これは、会社の中での上司とかでもありますけど。
これもまた、「若い頃のまま感覚が更新されず、止まってしまっているから」の一種ですね。
「大人はなぜ若者文化をバカにするのか」については、他にも理由があるでしょうが、一例として、「若い頃から流行りの若者文化をバカにしていたから」というのは、あるかもですね。
パンケーキもイカのこのわたも美味しいですよ。好きなほう食べればいいんですよ。