宇野ゆうかの備忘録

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玉城デニー知事の手話は全然すごくない

 やや煽り気味のタイトルをつけてみました。

先日、こういうTweetTwitter上で話題になっていたんですね。

 

 

で、多くの人がこのTweetリツイートして、「すごい!」「かっこいい!」 と言っていたのです。

 

ryukyushimpo.jp

 

ネット上で話題になったことについて、玉城知事本人はこう言っていたわけですが…

玉城知事は本紙の取材に「手話は自己紹介とあいさつくらいしかできないが、通訳の方の前をいつも通るので思いがけずに出たのだと思う」と説明した。インターネット上で評判を呼んでいることについて「ありがたいですが、なんだか褒められ過ぎです。あくまでもあいさつですから」と話した。

玉城デニー知事の手話「ありがとう」 記者会見に「いいね」2万回 聴覚障がい者が投稿 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース

これ、おそらく、謙遜でもなんでもなく、手話学習者としてはこういう感覚なんだろうと思います。いや、手話でなくとも、外国語を習得しようとした経験がある人なら、自己紹介とあいさつができる程度では、自分のことを「すごい」とは思わないでしょう。

私も少しばかり手話を学習したことがあるのですが、あいさつ程度の手話を覚えるくらいは、けっこう簡単です。手が動きさえすれば、ちょっと「手話 あいさつ」で検索して動画や画像を見てみるだけで、わりと誰でも「ありがとう」「よろしくお願いします」くらいは言えるようになるでしょう。

 

まぁ、「Thank you」とか「謝謝」とか言ってるのと同じですからね。逆に、その国の挨拶程度の言葉を発しただけで「すごい」「かっこいい」と言われる言語って、例えば何があるんだろう、と考えてみると……「コサ語」とか「ズールー語」とかですかね……?

玉城知事の手話は日本手話であり、国内言語なわけですが、多くの日本人にとって、日本手話は、英語や中国語やフランス語よりも非日常で、コサ語やズールー語くらい遠い存在だということなのでしょうか。それはつまり、多くの日本人にとって、聴覚障害者が心理的に遠い存在だということなのではないでしょうか。

 

「ありがとう」「よろしくお願いします」くらいの手話なら、みんな知ってる。別に珍しくもないしすごくもない。知事がやったからといって、注目されないし「かっこいい」とも言われない。聴覚障害者の人も、別に驚いたり嬉しいと思ったりしない。

……私は、そういう社会のほうが良いと思います。

 

 

日本手話であいさつ。


ことば紀行「日本手話」【あいさつしてみよう】

 

ところで、手話ができる知事といえば、鳥取県平井伸治知事がいますね。鳥取県は、日本で初めて手話言語条例が制定された県です。

 

〔追記〕

id:NOV1975 でもさ、嬉しいとかすごいと思ってもらえたらやる方の動機は高まると思うんだ

聴覚障害者の人は日本手話と日本語できる人多いから、すごいですよね。日本語と日本手話は、文法も言語形態も違う、それぞれ独立した言語ですから、日本手話で話して日本語で筆談やメールをする聴覚障害者は、2つ以上の言語ができる人ということになります。

考えてみれば、日本手話が第一言語聴覚障害者にとって、日本語は第二言語なわけですが*1、大多数の聞こえる人って、聞こえない人とコミュニケーション取る時に、彼らが日本語で筆談したりするの、特に嬉しいとかすごいとか思わず、当たり前だと思ってますよね…… 

 

※関連記事。これを読むと、手話通訳がマスクではなくフェイスガードをつける理由がわかります(笑)

yuhka-uno.hatenablog.com

*1:日本の聴覚障害者は、大きく分けて、日本語が第一言語の人と日本手話が第一言語の人がいます。詳しくは関連記事『「字幕だけじゃダメ?」←「ダメなんです」~なぜ手話通訳が必要なのか』をお読み下さい。