宇野ゆうかの備忘録

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選挙が苦手な人と、おしゃれが苦手な人は、似ているのかもしれない

 
togetter.com

 

上の彼女さんから、政治や選挙に対するコンプレックスを感じました。この反応、ファッションやおしゃれにコンプレックスを感じている人に、「もっとおしゃれしなよ」って言った時の反応に似てると思います。

 

Togetterのブコメにこんな意見がありました。

id:covacova なんか分かった気がするぞ。選挙に行かない人や、体制派にしか入れない人は、正解が何かを気にしているんだな。正解とは多数派で、正解に入れなかった自分を他人に見られるのが怖いんだ。まさに教育の成果だ

 投票用紙を「解答欄」だと思ってしまう教育の成果というのも、確かにあると思います。そして、これとはまた別の角度として、「人は、自分がよくわからない分野で『正解』を出さなければと思う時、とにかく大多数と同じようにして安心したがる」っていうのもあると思います。

おしゃれが苦手な人がおしゃれしようとすると、自分の軸がないため、自分に合うかどうかもわからず、ただ流行に振り回されるだけになってしまったり、マネキン買いしたりしてしまいがちです。一方、おしゃれな人は、流行をチェックしながらも、流行に流されず、自分に合うと思うものだけを取り入れます。

選挙慣れしているかしていないかも、これに似ているのかもしれません。

 

“まず、中高生のときって「制服とジャージ」しか着なかったのに、大学に入って「いきなり、毎日私服」という状況になると、何を着ていいかわからない。”

“それで、そういう「ファッションレベル1」の状態で大学生になって、焦って服を買いに行こうとすると「量産型化」してしまう。

でも、大学にいったらみんな「量産型」で安心しました。ヘンな服を着て浮いたり、バカにされるのが怖かったので。「個性がなくて恥ずかしい」なんて思わなかったです。”

なぜ女子大生は「量産型化」してしまうのか? 元量産型の女子大生が語る、絶滅した「ガーリー型」の謎と、わたしが量産型になってしまうまで。 | アプリマーケティング研究所

 私は、選挙で「自分が入れた党が多数派だと安心する」と言う人の感覚がわかりませんでした。選挙って、「多数派だったから安心」とか、そういうもんじゃないのにな…と。でもそれって、ファッション量産型な人の感覚に似ているのかもしれませんね。「政治レベル1」の状態でいきなり選挙に行くと、「量産型」になってしまうのでしょう。

 

“あんな:みんな争点争点って言うじゃないですか。「今回は年金選挙だ!」「いや、消費税選挙だ!」「いやいや憲法選挙!」。バラバラじゃん!? って混乱します。結局今回、何選挙なの!?

とんふぃ:憲法改正、消費税10%増税、経済政策、原発最低賃金夫婦別姓、LGBTQ……。国民の関心が高い問題はだいたい争点になっているので、迷うのはもっともですが、実は選挙の「争点」はみなさん自身がそれぞれ決めていいものなんです。

かん:え、自分で優先順位を決めていいんだ。”

政治音痴のための7.21参院選 長田杏奈&かん(劇団雌猫)が緊急取材 - She is [シーイズ]

 上の会話は、まるで、流行に振り回されるおしゃれオンチな人と、自分のファッションスタイルができている人の違いのようです。「ファッションサイトじゃ、今年はこれが流行るとか、これが来るとか言うじゃないですか。結局、何を着ればいいの!?」みたいな。

 

世間では、投票日が近くなると、投票を呼びかける声が多くなりますけど、どうにも、投票を呼びかける側の人って、投票所入場券(ハガキ)持って投票会場行って投票するくらい、誰でもできるだろうと思ってる人が多いように思います。ネット上では、実際、「投票に行くくらい、簡単だろ。なんでできないんだよ!」って言ってる人も見かけました。

でも、選挙が苦手な人と、おしゃれが苦手な人が似ているのなら、政治オンチな人に「投票に行け」って言うのは、おしゃれオンチな人に「おしゃれな店で服買ってきなよ」って言うようなものなのかもしれませんね。

 

実際、自分自身が投票までにかける手間のことを考てみると、ぜんぜん投票日に投票するだけじゃないんですね。まず、日頃から、どの政党がどんな方針かとか、この議員は推せるとか、反対にこの議員はダメだとか、おおまかにでも見ている。そして、選挙が近くなると、候補者をチェックして、それで選挙に向かうわけです。

だから、選挙って、その大部分は、日頃の習慣なんですよね。投票なんて、最後のほんの一手間。料理で言ったら最後の盛り付けと配膳くらい。つまり、投票率を上げようと思ったら、選挙の時だけ投票を呼びかけるんじゃなくて、日頃から政治に興味を持ってもらうことを考えないといけないんだと思います。

 

それに、どうやら、選挙が苦手な人にとっては、そもそも投票所に行くこと自体がハードルが高いみたいなのです。私がそれを感じたのは、下の記事を読んだことがきっかけでした。元モーニング娘。田中れいなという人がやっていたラジオ番組での会話だそうです。

“20歳になったばかりの二人は選挙のハガキはきたが、いつ行くのか、何をどうすればいいのか分からないといった感じだ。
25歳のれいなに関しては、去年までハガキが来ていたことすら知らなかったとか…。

さすがに周囲の大人に行きなさい、と忠告されたが、どこに行けばいいのかも知らなかったらしい。
行ってみた感想としては、「怖かった~!」と言っている。

やっと投票所に行ってみたが、候補者名や政党名を二度も書くことがワケが分からなかったらしく(選挙区選挙と比例代表選挙かな)、でも誰にも疑問を聞くこともできないので、とにかく怖かったらしい。”

インターネット選挙運動で、若者の投票率は上がるのか? - 田舎で底辺暮らし

他にも、今まで選挙に行ったことがなかったという人で、「この年になって、選挙会場で勝手がわからずまごついてるなんて、恥ずかしいという思いがあった」と言っている人も見かけました。 

 

私の場合は、子供時代に、親が投票するところを見ていたり、初めての投票の時には親と一緒に行ったりしたので、投票会場に行って投票するのは、別に特別なことではないんですね。それに、親が政治の話をする人だったので、たぶん、20歳になる頃には、拙いながらも、ある程度自分の政治に対するスタンスができていたと思います。

でも、選挙が苦手な人は、たぶんそういう環境がない。それはまるで、高校生の時からおしゃれに目覚めていた人と、ずっとおしゃれの世界に触れずにきた人との違いくらいはあるのではないでしょうか。

“2016年の参議院選後に総務省がインターネット上で実施した「18歳選挙権に関する意識調査」によると、子どもの頃に親の投票について行ったことのある人とない人では、投票参加率に差があったのです。

18〜20歳の男女3000人のうち、親の選挙について行ったことがある人の投票参加は63.0%で、親の選挙について行ったことがない人は41.8%と、約20ポイントの差があったといいます。”

子どもを選挙に連れていくべきたった一つの理由

 

Tweetでは、彼女さんは「学校で政治や選挙のことなんか教えられてない」と言っています。多くの人が指摘しているように、一応、学校では政治や選挙のことは(十分ではないにせよ)教えています。ただ、学校で習っただけでできるようになるのかというと、それでは不十分だと思うのです。私の弟は、家庭科で料理を習ったはずですが、料理ができません。いくら学校で習っても、家で料理をする習慣がなければ、身につかないようです。

政治や料理に限らず、私たちは、学校で習ったことでも、自分の普段の日常生活の中でやらないことは忘れてしまうというのは、よくあることですしね。

 

若者にとって政治や選挙のことがわからないのは、日本で政治の話題がタブーだということも大きいと思います。アメリカとかだと、若者に人気のポップアーティストが、日頃から政治的な発言をしますし、自分の作品にも政治的なメッセージを込めます。政治の話題が、普段の日常生活の中にあるのでしょうね。

日本の場合は、どうもそうじゃないですよね。アーティストが政治的な発言をするのを嫌いますし、日本のポップミュージックも、政治とは関係ないものが求められますから。若者は、「空気を呼んで」、政治的なことを言うのを避けますし。

 

去年、テイラー・スウィフトが、初めて自分の政治に対する考えを明らかにしたことが話題になってましたけど、話題になった理由のひとつには、他のアーティストは政治的発言をするけれど、テイラーはこれまでしてなかったからというのもあるでしょう。

front-row.jp

 

たぶん、選挙慣れしていない人って、選挙演説とか政見放送とかのほうに注目しがちだと思うんですけど、実際は、日頃から政治に興味を持つ習慣を身に着けるという、けっこう地味なものなんですよね。

ファッションで例えるなら、おしゃれな人は、日頃からファッション情報をチェックしてるようなもの。美容についても、一時的にエステに行くよりも、普段から日焼け止め塗ったり、肌のお手入れをするほうが大事です。

ぶっちゃけ、私、選挙演説聞きに行ったりしないし、政見放送もほとんど見ないですもん。

 

“私はずっとノンポリでした。だから会社のしがらみとか、多数派に投票しておけば責任を問われなくてラク、みたいな気持ちも分かるんです。”

「私は山本太郎に発掘されたノンポリ」 自民党議員一家で育った25歳女子が「れいわ新選組」を推す理由 | BUSINESS INSIDER JAPAN

私にとっては、上の記事は、記事のメインの内容より、この部分が気になりました。ああ、そういう考え方なのか……と。

この考え方、実はけっこう危険だと思うんです。子供のいじめも、いじめを隠蔽する学校も、企業の不祥事も、ナチスドイツの独裁政権も、その根底には、「多数派になっておけば責任を問われない(はず)」という思考回路があるからです。

私は、多数派に投票するのと、少数派に投票するのとでは、どちらも責任は同等だし、もっと言えば、投票することを選ぶのも、投票しないことを選ぶのも、同等だと思います。選挙権とはつまり、自己決定権なのですから。

 

これを書いている私自身も、おしゃれオンチ状態から、おしゃれ好きになった人間なんですけど、おしゃれになる過程で必要だったのが、「モブキャラでいるのをやめて、主役になる覚悟」だったんですね。

たぶん、政治参加っていうのも、それに近いものがあると思います。政治に興味を持って、自分なりのスタンスを持つというのは、この社会の中で、モブキャラでいるのをやめて、自分が主役になる感覚を持つことだと思うんです。

だから、「多数派に投票しておけば責任を問われなくてラク」というのは、投票はしていても、まだ、社会における「主役」感が身についていない状態なのかもしれませんね。

 

あと、よく「選挙に行かない人に文句を言う権利はない」って言う人がいますけど、はっきり言って、あれは嘘です。今のところ、日本にそんなルールはありません。言論と表現の自由は、選挙に行った人にも行かなかった人にありますし、そうあるべきです。

順序が逆だと思うんですよね。選挙に行ったら、文句を言うことが許されるんじゃなくて、「自分だって、政治に文句を言ってもいいんだ」と思えて、文句を言うことに慣れてくるから、選挙に行くんです。

文句を言うといっても、いきなり街頭でデモするとか、そこまでじゃなくて、日常生活の中で、不満に感じていることを愚痴るような感じで、ですね。

 

私は、現時点で選挙が苦手な人は、無理に投票する必要ないんじゃないかなって思います。「政治レベル1」の状態でいきなり選挙に行くのは、けっこうハードルが高いと思います。おしゃれなら、最初は大多数と同じの「量産型」から入るのもいいですけど、選挙ってそういうものじゃないので。まず自分の政治レベルを上げてからでもいいと思います。

ただ、選挙の練習のつもりで、選挙会場に行って、候補者名を書かずに白票を投じてみるのも、いいと思いますよ。おしゃれオンチな人がおしゃれの練習をするために、一度おしゃれな店に入ってみて、どういうところか見て、何も買わずに出てくる、みたいな感じでね。

 

 

おしゃれオンチだった私がおしゃれになる過程。「モブキャラ→主役」についても書いてます。

yuhka-uno.hatenablog.com