『40歳までにオシャレになりたい!』より~おしゃれオンチとメシマズの共通点
Webで連載されていた頃からちょこちょこ覗いていた、トミヤマユキコさんの『40歳までにオシャレになりたい!』が本になった。内容は、普通の人はまず選ばないような服で、クセの強い「圏外ファッション」ばかりしていたトミヤマさんが、その場や立場に応じた装いができるようになりたいと思って、40歳を前に、おしゃれをなんとかしてみようと奮闘するもの。
ちなみに、前回記事『貧乏人の私がおしゃれになるためにしたこと』は、トミヤマさんの『40歳までに~』に触発されて書いた部分もある。
おしゃれオンチとメシマズの共通点
私は、そんなトミヤマさんの奮闘の様子を覗き見ながら、こう思った。
「そうか…!おしゃれオンチな人がおしゃれオンチな理由って、メシマズさんがメシマズな理由と一緒だ…!!」
メシマズさんがメシマズな理由といえば、大抵、
・分量を計らない。
・味見をしない。
・基本を知らずに勝手にアレンジ。
あたりだけど、おしゃれオンチな人がおしゃれオンチな理由も、
・試着をしない。
・鏡(全身映るやつ)を見ない。
・基本を知らずに勝手にアレンジ。
あたりだと思う。
そういえば、メシマズさんの中には、日本文化圏では聞き慣れないハーブやスパイスを買ってきて料理をするのが好きなタイプの人がいる。これは、いわば「圏外料理」なのではないだろうか。
トミヤマさんは、「これまでの人生、オシャレかどうかの判断がつかない個性的な服を選び、『オシャレの圏外』に出ることで、世間様のファッションチェックをかわし続けてきた。」とのこと。
もしかしたら、圏外料理タイプのメシマズさんも、料理コンプレックスをこじらせた結果、「『すまし汁』とか『ぶり大根』とか作ったら、メシマズなのがバレるけど、『圏外料理』を作っておけば、、世間様の料理チェックをかわすことができるのでは…」という思考になっているのかもしれない。知らんけど。
「アイテム萌え」から「自分映え」へ
srnkahtn オタクはファッショングッズをバランスを見て「揃える」のではなく、自分が気に入ったものだけを買い「集める」ので結果ちぐはぐコーデになるのだと聞いたことがある。つまり同人誌やフィギュアと同じ買い方。
zyzy 前にもチラッとあったけど、結局「その服着てる自分」ではなく「服そのもの、アイテムそのもの」に萌えて着るというオタクのサガが根底にある以上、どうあがいても……うん。自分萌えするスキルがないと難しい。
オタクっぽく見られない服選びの基本『一般人のコスプレの仕方』がとても参考になる「めっちゃ納得」※追記あり - Togetter
トミヤマさんの「オシャレになりたい」は、おそらく、ここで言われているような、トンチキ服好きな「アイテム萌え」感覚状態から、その服で自分自身をよく見せる「自分映え」の感覚を身に付けるということなのだと思う。
私はトンチキ服の萌えポイントはよくわからないけれど、これが「クラシカルロリィタ」とかになってくると、途端にテンションが上がってしまうので、そういう方向では、私も「アイテム萌え」な感覚が存在している。いやー、最近は「華ロリ」っていうジャンルも良いんですよ…
おしゃれを「教える」ということ
トミヤマさんは、お母様が服飾系専門学校卒のハウスマヌカンだったこともあって、子供の頃からおしゃれ服を与えられ、自分で試行錯誤しておしゃれになる過程を経ずに過ごしてきたそうだ。
一方、私の場合は、毒要素のある母の「おしゃれや流行に興味のない子でいてほしい(金がかかるから)」という願望を内面化した結果、長らくダサい子として過ごしてきた。私の子供の頃の服装に対する母の姿勢は、「従姉妹や近所のお姉さんからもらったお下がりを、選り好みせずに着て欲しい」というもので、私が自分の気に入った服ばかり着ていると、「そればっかり着て、もったいない」と言っていた。そもそも、母自身が、それほどおしゃれに興味がある人ではなかったのだ。
というわけで、同じおしゃれオンチ状態だったとは言っても、トミヤマさんの環境とは全然違ったので、おしゃれな親だからこそ、子供がおしゃれオンチになるという状況は、感覚としてよくわからないのだけれど、おしゃれ以外のことで考えてみれば、こういうことになってしまっている人は多いのではないかと思う。
例えば、いつも親が片付けてくれていたので、片付け方を身に付けられなかったとか、親はいつも完璧な料理を作っていたけれど、料理を教わったことがなかったとか。そう考えると、これは、「子供に自分でする機会を与えないで、親がやってしまう」という、よくある話の一例なのかもしれない。
あ、そういえば、子供にアルマーニの制服を与えるだけで「服育」になるのか、という話があったっけ。
おしゃれについて「教える」ということで思い出すのが、『Style up スタイルアップ~ティム・ガンのファッションチェック』という、日本でも放送されていた番組だ。(前の記事でも紹介してた。どんだけ好きなんだよ。)
この番組は、よくある日本の素人変身番組のように、その時だけ、プロが何から何までしてあげておしまいではない。ダイエットをしろとも言わない。その女性が自分でおしゃれになれるよう、そのままの体型で、自分を活かせる服の選び方と、メイクとヘアメイクのやり方を学ばせるのだ。
ティム・ガンの教え方については、既に詳しく書いている方がいるので、そちらに丸投げする(笑)。
雨宮まみさんが書いていた、ティム・ガンのファッションチェックについての感想。
シャネルとのお付き合い
さて、『40歳までに~』を読んでいて、ちょっと気になった箇所がある。トミヤマさんが、パーティーに「伝家の宝刀『母親のシャネルバッグ』」を持って行った回だ。「知人に『なにそのバッグ?どうしたの?』とニヤけ顔で訊かれて」しまい、伝家の宝刀とトミヤマさんのハートは、ボキボキに折られてしまったとのこと。
このことを、トミヤマさんは、「服がバッグに負けていたからだ」とお考えになって、パーティー用のドレスを買うことにしたのだけれど(そのドレスはとっても素敵だ)、知人の方が「なにそのバッグ?」と言った理由は、おそらく、そもそもこのバッグ自体が、フォーマル向けではないからなのでは…
試しに「シャネルバッグ コーデ」で画像検索をかけてみると、ジーンズに合わせている人は出てきても、フォーマルドレスに合わせている人は出てこない。「chanel bag outfit」で検索した場合もそうだ。
ということは、やはりこのシャネルバッグは、街着用であって、フォーマル用ではない可能性が高いと思う。
ちなみに、CHANEL日本法人社長、リシャール・コラス氏の言葉。
講演の最後にこんな質問が観客から出た。
「本来CHANELを身につけるべきではない人が
CHANELのイメージを下げている問題をどう思うか」
コラスさんは「その質問大好き。必ず聞かれる。
ココ・シャネルはすべての女性のためにデザインをした。
だからCHANELを身につけるべきではない人は存在しない。」
シャネルのマトラッセ、ガチフォーマルなシーンには向いてなくても、ちょっとしたお出かけなどに身につけて行くには、誰かに許可を取ったり何かの資格が要るわけでもないみたい。
おしゃれと40歳
たぶん、40歳手前の年齢というのは、ある人は部下ができたり、ある人は独立したり、ある人は母親としての付き合いが必要になったりとかして、「場に合った服装」というものが求められるようになってくる時期なのだろう。たまたま「きちんとした格好」が要求されない職場にいて、20代の頃は好き勝手にやれた人でも、そうも言ってられなくなる環境に立たされる。
一方、私は大人顔だったので、若い時から、若者がしているような、ラフな格好やかわいい服が似合わないタイプだった。トンチキ服はもちろん、グレーパーカーも部屋着でしか着たことがない。若者に流行りの格好はことごとく似合わなかった。
当時はそれでしんどいこともあったけれど、長い目で見れば悪くなかった。早いうちに「私は私」と思えたし、若いうちから大人向けの服装に適応していたので、後から楽になってくるタイプだと思う。結局私は、若い時から「きちんとした格好」が一番似合う人間だったのだ。
私は「40歳逆転説」を唱えている。若い頃は、とかく生まれ持った容姿の善し悪しがものを言う傾向があるが、40歳くらいになると、若さというアドバンテージがなくなってくる分、ファッションセンスがものを言うようになると思う。
だから、私は照準を40歳に合わせてある。若い頃はダサくて地味な子だった分、40歳になった時にそこそこ綺麗に見られればいい。ココ・シャネルだって、「20歳の顔は自然からの贈り物。30歳の顔には生き方が出る。50歳の顔はあなたの功績」って言ってるし。
トミヤマさんは、「オシャレをがんばるのは逆にダサいのか?」と仰っていたけれど、私はこう思う。
「40歳にもなって、今からおしゃれコツコツ頑張ろうとするのって、ダサくない?」って考えてしまう人、けっこういると思うけど、私は、周りの人に「私、おしゃれになりたいの!どうすれば良いと思う?」って公言して、自分より幾つも年下の人にも教えを乞えるような40歳って、かっこいいと思う。
— 宇野ゆうか (@YuhkaUno) July 6, 2016