ほとんどの女性が性犯罪被害者であることを知った男性に、気をつけてほしいこと
新潟の女児殺害の報道、胸が痛くてみれません。山口メンバーの件も然り。
— りょうたっち (@ryoutacchi3) May 16, 2018
私が男性だからか、被害者の声を聞く機会もなく、報道をみても「自分はそんなことしない」で思考停止に陥ってました。実態を知って考えたいので、女性の方、教えて下さい。
未成年の時に、痴漢・性的いやがらせ・セクハラ等を
Twitterで、りょうたっち (@ryoutacchi3)さんという男性が取った、女性に対して、「未成年の時に、痴漢・性的いやがらせ・セクハラ等を」経験したことがあるかないかと問うたアンケートが、回答者10万票を超えて、ちょっとした話題になっています。閲覧用を選択した人を除けば、およそ8割の人が「ある」と回答する結果になりました。この回答結果は、りょうたっちさんにとっては、とてもショックだったようです。
私は、この問題が広く知られることを望む反面、正直、不安も感じています。
私はこれまで、個人の男性が、女性のほとんどが性犯罪被害者で、それが表に現れず、犯人が野放しになっている現実を知る場面を、何度か見てきました。そして、その男性が色々と「やらかして」しまうのも見てきました。
なので、これまで見てきた男性の「やらかし」から、気をつけてほしいことをまとめてみました。
女性に対して「もっと声を上げて」と言ってしまう
女性たちは、ずっと前から声を上げてきました。しかし、ジェンダーギャップ指数144ヵ国中114位(2017年版)のこの国では、マスメディアも警察も司法も政治も、重要なポストは男性ばかり。「健康で健常な日系日本人の成人男性」が関心を持たなかった話題は、マスに広がっていかないシステムになっているのです。
加えて、同じことを言っていても、男性だとすぐに受け入れられて、女性だと聞いてもらえないというのは、よくあることです。もちろん、ジェンダーギャップが大きい国では、それが顕著になります。
「自分にとって興味のない社会運動は見えない法則」があると思います。ある人たちが抱えている問題に興味がない人は、「彼らが社会運動している場面を見ていない=社会運動自体がない」と思い込んでしまうのです。そして、何かの拍子に、マスに大きく取り上げられた時に、はじめてこの問題が出現したかのように認識するのです。でも、アメリカ大陸は、ヨーロッパ人が発見する前から、ずっとそこにあったのです。
つまり、あなたがこれまで、この問題を知らなかった理由は、「女性が声を上げないから」ではなく、「男性が無関心だから」です。であるならば、必要なのは、「女性が声を上げること」ではなく、「男性が関心を持つこと」ですね。
あと、当たり前の話ですが、自分の性被害体験を語るかどうかは、その人自身が決めることであり、他人がそれを強要してはなりません。
女性に対して、性犯罪被害に遭わないためのアドバイスをしてしまう
これまであまり性暴力について知らなかったし考えてこなかった人が今思いついた方法は、「もし学校がテロリストに占拠されたら…」と考える中学生の妄想と同じくらいには、効果があるかもしれません。
当たり前の話ですが、男性が普通に日常生活を送りながらできる防犯でなければ、女性だってできません。「そこまでやったら、普通に仕事したり、友達と遊んだりできなくなるよね?」という防犯方法は、現実的ではありません。加えて、女性のほうが男性より平均賃金が低く、日本の女性は世界一睡眠時間が短いということも、考慮しておいて下さい。
前々からこの問題に関心を持ってきた人の間では、この議論は、もっと次の段階に進んでいます。つまり、「女性に対して、性犯罪被害者にならない方法を教える」フェーズから、「全ての人に、性犯罪加害者にならない方法を教える」フェーズになってきているのです。
世界各国で、「性行為の同意」について、子供たちに教える流れになってきています。「相手が自分の家に来たり、相手の家に招かれたからといって、セックスを承諾したわけではない」「相手が泥酔していたりして意識がない時は、性行為をしてはならない」「女性がセクシーな格好をしているからといって、あなたとのセックスを望んでいるわけではない」というようなことを、きちんと教えよう、ということです。
イギリスの警察が2015年に制作した、性行為の同意についての動画
また、性犯罪が起きる前の「予防」だけでなく、起きてからどう「対処」するのかも、重要な課題です。性犯罪については、「予防」ばかりに目が行き、「対処」に意識が行っていない人が多いと感じます。しかし、あなたも既に知っている通り、女性のほとんどは何らかの性犯罪被害を受けます。被害を受けた後のケアもまた、この問題の重要な課題だということも、覚えておいて下さい。
性犯罪被害者の主体性を奪ってしまう
時々、メサイアコンプレックスみたいになってしまっている人を見かけます。本来なら、性犯罪被害者の人たちを主体にするべきところを、自分が主体になってしまう。被害者の人たちから、当事者性を奪ってしまうのです。
助けたい、何かしたいという気持ちばかりが先走り、まだ十分な知識を身につけていないうちから突っ走り、間違った情報を広めてしまう。自分がこの問題の主人公になってしまって、被害当事者や、これまでこの問題に取り組み続けてきた人たちから、発言の機会を奪ってしまう。こういう人たちを、けっこう見てきました。
そうした動機による行動は自己満足であり、相手に対して必ずしも良い印象を与えない。また相手がその援助に対し色々と言うと不機嫌になる事もある。しかもその結果が必ずしも思い通りにならなかった場合、異常にそれにこだわったり逆に簡単に諦めてしまう事も特徴的である。
先に述べたように、これまで女性たちが散々発信しても注目されなかったことが、男性であるあなたが発信者になると、一発で耳を傾けてもらえるということが、あるかもしれません。しかし、本来であれば、そもそもこの問題は、女性たちの声をないがしろにしてきたから、起こっている問題なのです。この問題を解決するために、女性たちの声をないがしろにしたのでは、本末転倒です。
あなた自身が性犯罪被害者で、あなた自身のことを語るというシチュエーションでない限り、あなたはこの問題の主人公ではありません。あなたの気持ちを満たすために、被災地に千羽鶴を送りつけるような行為は、やめてほしいのです。
それでも千羽鶴を送りたくてたまらなくなった場合は、心理カウンセリングを受けるなどして、心を落ち着けて下さい。ショッキングな情報に沢山接したことで、心にダメージを負ってしまっているかもしれませんからね。
「自分はこの問題について、ペーペーの新人だ」ということを忘れてしまう
あなたにとっては、残念なことかもしれませんが、ペーペーの新人がいきなり有益な存在になろうとしても、それは無理な場合が多いです。新人がいきなり有益なアドバイスなんてできるわけがありません。とりあえず、先輩たちの邪魔をしない振る舞いを身に付けることが求められるのは、新人あるあるです。
どの分野でも、新人に求められていることは、「知って、学ぶ」ところからです。まず「知って、学ぶ」ことから始めて下さい。
この社会は、被害の実態からかけ離れた「痴漢神話」「レイプ神話」で溢れています。あなたも、知らず知らずのうちに、この偏見を身につけてしまっているかもしれません。あなたがいくら、この問題を何とかしたいと思っていても、正しい知識を身につけないうちに、議論に参加してしまうと、被害者を傷つけることしかできず、結局、邪魔をして終わるだけになってしまうかもしれません。
“『TCHIKAN』の共著者、エマニュエル・アルノーは二次被害についてこう語る。
「日本で起こっている二次被害は、私の感覚では、起こりうる害の中でも最悪なものの一つだと感じています。」”
「山手線で6年間、痴漢に遭い続けた私の#MeToo」|日本人女性がフランスで“チカン”本を出版し、現地で大反響を呼んでいる | クーリエ・ジャポン
courrier.jp
二次被害(セカンドレイプ)は、「性犯罪をしない、普通の人」がする加害行為です。そして、このセカンドレイプこそが、被害者が被害を訴えるのを阻害し、犯人が野放しになってしまう、大きな要因になっているのです。
まずは、セクハラや性暴力についての正しい知識を得て、被害に逢った女性を傷つける発言(セカンドレイプ)をしない人になることを目指して下さい。そうすることで、被害に逢った人たちが、安心して自分の身に起こったことを話せる世の中を作ることに貢献して下さい。
自分は女性の味方だから、女性から当然歓迎されるだろうと思ってしまう
もうお気づきかと思いますが、この問題の根底には、性差別があります。性犯罪加害者の中にある問題であり、あなたの中にある問題であり、女性たちの中にすら存在している問題です。
この問題について誠実に取り組もうとする人は…特に男性は 、性犯罪と戦う前に、まず、自分の中にある差別心や偏見と戦う必要に迫られるでしょう。
女性たちは、あなたを歓迎したいという気持ちを持っている反面、あなたを警戒しています。セカンドレイプの話は既にしましたが、あなたが性犯罪被害者(つまり女性の大半)を傷つける振る舞いをしないか、警戒しているのです。
これは性差別以外のことにも言える話なのですが、味方かどうかを決めるのはあなたではなく、相手だということを覚えておいてください。(自分の身近な人が、何らかの被害に遭った場合も同様です。)そして、自分の中にも、自分では気付いていない、差別心や偏見があるかもしれないということを、心構えとして持っていてください。
最後に、このサイトを紹介しておきます。これはLGBTのアライであるための心構えを書いたものですが、あなたがこの問題について取り組む際にも、十分応用できるでしょう。
最後に…
いかがでしたか?かなり厳しい内容でしたか?
でも私は、こういった心構えがないまま、この問題に首を突っ込んで、もっと厳しいことになっている男性を、これまで沢山見てきました。そんなことになるのは、双方にとって不幸です。なので、これを機会に、まとめておこうと思いました。
このエントリは、いわば、山登りのスタート地点に立った人に、山登りの心構えについて解説したものです。この山に登るのは、そう易しいものではないと言わざるを得ません。しかし、幸い、先に登った人が沢山いて、資料や文献といった形で、道をつけてくれています。
私も最初は、この問題についてよく知らなかったので、自分で調べて学んで考えてきました。あなたも、自分で調べて学んで考えて、この山を登ってきてください。